「日本はベンチャーが成功するチャンスに溢れています」

岩瀬 大輔ライフネット生命保険株式会社代表取締役社長兼 COO

松本 大マネックスグループ代表執行役社長 CEO マネックス証券株式会社代表取締役会長 CEO

新しいものを生み出す人間は全体の1%

松本 起業して良かったな~、って思う瞬間は、どんな時?

岩瀬 やっぱり、自分自身の手で、新しいものを作っていくのは掛け替えのないことなんだと思いますね。あと、自分でチームをゼロから作っていき、自分が「この人と働きたいな」と思える人たちに囲まれているというのは、起業するうえで何よりの醍醐味だと思いますね。

松本 岩瀬さんの場合、いろいろな選択肢があったでしょ。大企業、官僚、さまざまな道でキャリアを積み上げられたと思うんだけど、どうして起業の道を選んだの?

岩瀬 振り返ってみると、僕はもともと少人数でいるのが好きだということを思い出したんですよ。サークルも大勢で群れるのが苦手で、テニスサークルやゴルフサークルのオリエンテーションには行ったものの、何か嫌で入らず、ジャズのサークルに入ったものの、卒業する時まで残っていた同期は1人だけ。最初の就職先はコンサルティング会社でしたが、東京オフィスは全員で80人ほど。転職先の投資ファンドは20人くらい。そしてライフネット生命を立ち上げた時は、会長の出口と2人だけでしたから、小さい組織が好きだということなのでしょうね。それに加えて、皆がやっていることを自分がやる必要はない、自分にしか出来ないことに挑戦したいという気持ちが強いから、やはりベンチャーが性に合っているのだと思います。

松本 ベンチャーって、何だと思う?

岩瀬 世の中には二通りの人間がいると思います。99%は何らかのかたちですでにあるものを運用する。残り1%は世の中に新しいものを生み出している。その1%の人の集まりがベンチャーなのでしょうね。なので、たまに学生の前で話すのですが、何もないものを創り出す存在になって欲しいと伝えています。

ベンチャーは突然変異種

松本 僕も同じようなことを考えていて、ベンチャーは突然変異種であると。ダーウィンの進化論が本当に正しいかどうかは論議があるけれども、突然変異が起きて、ほとんどの突然変異種は死に絶えるなか、たまたま新しい環境に適応している突然変異種のみが生き延びる。そして新しい世の中を創っていくための推進力になる。それがベンチャーだと思うんですよ。でもね、ほとんどのベンチャーは死に絶える。たとえば自分の兄弟、子供が「ベンチャーやるんだ!」と言ったら、確率論的にはほとんどが失敗するわけだけれども、それでも「やれ!」って言える?

岩瀬 たとえば子供がベンチャーを立ち上げたいと相談してきたら、「やってみたら」と言ってあげたいですね。失敗してもトライしたことが良い経験になると思いますし、僕は日本の場合、ベンチャーで失敗する確率というのは、米国に比べて相対的に低いと思います。需要と供給で考えると、圧倒的に供給が少ない。全く何の知識も持たずに起業したら失敗するかも知れませんが、サポートのエコシステムの中に入って、経験者のアドバイスを受けながらやれば、大成功はしなくても、死なずに何とか続けていける可能性は、米国に比べてはるかに高いと思います。その意味ではチャンスですよ。だから、僕は米国で起業したいとは思いません。何かアイデアを考え付いて起業しても、同じような会社が100社くらい出てくるじゃないですか。日本だと競合は5社程度ですよ。

松本 特にね、金融ベンチャーは成功確率高いと思います。なぜなら、金融庁との付き合いなどがあるから、多くの人はバーが高いと思い込んでいて、とても優秀な人があまり入って来ない。そして、そういう面倒なことも込みで金融ビジネスのリスク・リターンが作られているので、仮にその面倒な部分を僕らが引き受ければ、リターンだけがぐんと上昇する。そんなことをやっていこうと思っているんですよ。

岩瀬 素晴らしいと思います。米国のベンチャーキャピタルがもたらすものって、お金だけじゃないんですよね。ノウハウというか知恵だと思うんですよ。ちょっとしたサポートでも、あるのとないのとでは大きな違いがあるじゃないですか。ライフネット生命もマネックスのサポートを受けて、ここまで来たわけですから、今度は我々が、さらに次の世代に、しっかりノウハウを伝えていく。そういうエコシステムが出来るといいですね。

松本 日本はまだまだベンチャーを育てていくエコシステムが弱いんだよね。成功した人は自分のグループの中に創ろうとするし、大企業なんかは取り込もうとするじゃない。そうではない形でベンチャーを生み出していける環境を作りたいよね。

岩瀬 まあ、でも徐々に環境は整ってきているように思えます。先日、札幌で開催されたIVSでも、それまでは同じようなメンバーが集まって、同じようなことを議論していたような感じだったのですが、今回は顔ぶれにも変化があって、下の世代が大分入ってきたように感じました。で、先輩ベンチャーがアドバイスをしたり、実際に投資をしたりしているのです。それを見て、少しずつ変わってきたという印象を受けました。

ベンチャー支援に大事なのはお金以外の付加価値

松本 ちなみにマネックスベンチャーズは、アーリーステージで投資をし、追加投資はせず、エンジェル&ビッグブラザー的に、金額的にはそれほど大きくないかも知れないけれども、ストレートに応援する、アドバイスするという存在でありたいな、と考えているんですよ。

岩瀬 いいですね。正直、お金は結構、世の中に溢れているようにも見えるので、そうではないところの付加価値が大事だと思います。松本さんから直接、アドバイスを受けられるとかね。

松本 プライスレス!

岩瀬 プライスレス(笑)

松本 最後に、これから起業を考えている人たちに対して、何か力強いメッセージを(笑)

岩瀬 そうですね。やっぱり、ゼロから何かを生み出すというのは、掛け替えのないことなんだという想いを強く持っていただきたいですね。その気概がある人はチャレンジしてみるべきだし、10年前に比べれば、格段に起業しやすくなってきたと思います。環境は整ってきたので、是非ともチャレンジしてもらいたいですね。

岩瀬 大輔

ライフネット生命保険株式会社代表取締役社長兼 COO

1998年、東京大学法学部を卒業後、ボストン・コンサルティング・グループ、リップルウッド・ジャパン(現RHJインターナショナル)を経て、ハーバード大学経営大学院に留学。同校を日本人では4人目となる上位5%の成績で修了(ベイカー・スカラー)。2006年、副社長としてライフネット生命保険を立ち上げる。2013年6月より現職。世界経済フォーラム(ダボス会議)「ヤング・グローバル・リーダーズ2010」選出。株式会社ベネッセホールディングス社外取締役。

松本 大

マネックスグループ代表執行役社長CEO
マネックス証券株式会社代表取締役会長CEO

1987年東京大学法学部卒。ソロモン・ブラザーズを経て、1990年にゴールドマン・サックスへ。1994年に30歳で同社史上最年少のジェネラル・パートナーとなる。1999年、ソニー株式会社との共同出資でオンライン専業証券のマネックス証券を設立、2000年東証マザーズ上場、2004年には日興ビーンズを買収しマネックス・ビーンズ・ホールディングス(現マネックスグループ)を設立、2005年東証一部上場。現在、代表執行役社長CEO。マネックスグループは、全米5番目に大きいオンライン証券であるトレードステーションを含め世界に12拠点を持ち、全従業員数の7割を北米が占め、ベンチャー投資もしくはインキュベーションとしては、ライフネット生命、ユーザベース、マネーフォワードに対する初期投資がある。前東京証券取引所グループ社外取締役。現カカクコム社外取締役、ジェイアイエヌ社外取締役、ヒューマン・ライツ・ウォッチ東京コミティ議長並びに国際理事会理事、など。

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