「ベンチャービジネスって何ですか?」

梅田 優祐株式会社ユーザベース代表取締役共同経営責任者

松本 大マネックスグループ代表執行役社長 CEO マネックス証券株式会社代表取締役会長 CEO

必要は発明の母

松本 突然ですが、ベンチャービジネスって何ですか。

梅田 いきなり・・・・・・(笑)。難しい質問から来ましたね。

松本 最初の出会いって何だったかな。

梅田 最初にお会いした時、松本さんに言われた言葉、今も覚えていますよ。「競合企業なんて気にすることはない。米国の起業家のように、ポッと出てくる天才を恐れろ」って言われたんです。もっと上を見ろ、とも言われました。

松本 そんなこと言ったっけ(笑)。

梅田 人を介して松本さんにお会いしたんです。まず、自分がどんなビジネスをしているのかを見ていただくために、弊社製品のSPEEDAを実際に使っていただきました。まだ売上が立っていなくて、プロトタイプの状態だったのですが、松本さん、子供のような目をしてSPEEDAで遊んで下さったのを覚えていますよ。

松本 ちなみにSPEEDAというのは、企業分析や産業分析を行うためのオンライン情報サービスなんだよね。世界180カ国をカバーする企業データベースで、最長過去40年以上の財務データもピックアップできるって言うんだから、これは凄い。

梅田 松本さん、一所懸命にマネックスのデータを集めていましたよね。

松本 よく「必要は発明の母」なんて言うけど、ユーザベースの製品って、まさにその言葉通りのものだと思うよ。

鮮明に覚えている開業1年目のこと・・・・・・

梅田 SPEEDAのようなデータベースをセールスするには、とにかく地道な営業努力が必要なのですが、松本さんにいろいろな方を紹介いただいたおかげで、順調に導入先が増えています。ベンチャー企業を立ち上げた時って、確かに応援して下さる方、資金面で支援して下さる方も大切なのですが、何よりもパッと相談できる方がいると、本当に心強いなと思いました。あとは、やっぱり人を紹介して下さる方ですね。松本さんがマネックス証券を立ち上げた時って、ソニーの出資を取り付けましたよね。あの時、ソニーの社長をされていた出井さんとは、古くからのお付き合いがあったのですか。

松本 いや、まったく(笑)。ある時、IIJの鈴木社長から電話が掛ってきて、「今、出井さんと呑んでいるから出てこないか」と言われたんだよ。それを機に何度か出井さんと呑むようになって、自分の考えを話してみた。その頃の出井さんは、もうIT業界のスーパースターのような方だったのだけれども、自分を卑下しても、大きく見せても仕方がないので、とにかく等身大の自分を見ていただいた。服装もいつもカジュアルでね(笑)。新橋の料亭に招かれた時、はだしで行ったことがあって、料亭の方に、「はだしの方がお見えになられました」と言われてしまったこともある(笑)。

梅田 ネットビジネスって、システム構築が本当に大変じゃないですか。そこは私も散々苦労しているのですが、松本さんもかなり大変だったのではありませんか。

松本 大変だったね~。高価なサーバーとプログラムを入れたのだけれども、全然パフォーマンスが出なくてね。調べてみるとカーネルの設定を間違えていたなんて、初歩的なミスがいろいろあった。経験値が低かったんだね。最初の年なんて、建国記念日で週末の連休前にデータベースがいきなり止まってさ。金、土、日と徹夜作業。月曜日にはお店を開けなきゃならない。でも、システムが動かなければどうにもならない。下手をすると廃業になる恐れがある。結局、日曜日の未明になんとか動かせる状況になったのだけれども、あれは本当にしびれたね。

梅田 開業1年目のことですか。

松本 そう。

梅田 事業をスタートさせて1年目のことって、鮮明に覚えていますよね。でも、システムが止まってしまった時って、本当に神経がすり減ります。

恩返しは後輩にするもの

松本 まあ、そんなこんなで、私もいろいろ経験しているわけですよ。これからビジネスを立ち上げようとしている人たちに、こうした経験や人脈を提供できたらって思うね。

梅田 シリコンバレーのエコシステムが、ようやく日本でも回り始めたという気がします。出井さんが松本さんをサポートしたのと同じように、今は松本さんが僕たちをサポートして下さっている。それも、ご自身が起業する時に苦労した経験があるからこそ、生きたアドバイスもいただける。それが脈々と続いていく。これから日本に多くの起業家が生まれていくのに、とても大事なことだと思います。

松本 恩返しは先輩にするよりも後輩にするものだからさ。

梅田 ユーザベースは起業してから6年が経っているのですが、この間を振り返ると、やっぱり心細かったり、不安だったりしたことがたくさんありました。資本政策なんかも、自分自身がその分野に疎いと、本当に大変な思いをする。そんな時に、自身で起業をされていて、トラブルなども一通り経験した方がそばにいてくれると思うと、本当に心強いものです。

松本 あと社員にしても株主にしても、人との付き合い方が大事。僕は誰と付き合うかということよりも、誰と付き合わないかということの方が大切だと考え、そうしてきた。実際、起業するといろいろな方から「会いたい」という連絡が来る。なかには、ちょっと怪しい人もいたりする。間違った人と付き合ってしまうと、何かと面倒なことに巻き込まれる恐れがあるし、それによって他の人と付き合えなくなってしまうことも考えられる。だから、素性のよく分からない人とは付き合わないようにしてきたんだ。投資でも、自分が分からないセクターには投資しないのと同じでね。それを繰り返しているうちに、段々とそれが自分の評判として伝わっていく。そうなると、変な人から声がかからなくなるんだよ。

梅田 確かに人間関係は大事ですね。その点、今の僕は恵まれていると思います。やっぱり仕事をしていく以上、胸を張れるチームを作りたいですし、実際、今のチームはそれに近いところにあります。

松本 最初の核というか、構成ってとても大事なんだ。会社の社員にしても株主にしても、それは当てはまる。つまり、最初に会社を設立した時に、一緒に苦労してくれたメンバー、そして支援してくれた株主がいるわけだけれど、小さい会社がどんどん大きくなったとしても、結局、その会社の社員、株主というのは、小さい頃の相似形になるんだ。だから、社員にしても株主にしても、最初の形が大事であって、そのためには、誰と付き合わないかということを、まずしっかり考える必要があるんだよ。

梅田 その意味では、ベンチャービジネスというのは、まさに「人」ということになるのでしょうね。

松本 綺麗にまとめたね~(笑)。

梅田 優祐

代表取締役共同経営者

1981年生まれ。2004年横浜国立大学を卒業。コーポレイトディレクション、UBS証券を経て、2008年に株式会社ユーザベース(UZABASE,INC)を設立し、代表取締役共同経営者に就任。産業、企業分析のための経済情報プラットフォーム「SPEEDA」と経済に特化したニュースプラットフォーム「NewsPicks」を展開。東京、シンガポール、香港、上海に拠点を構える。

松本 大

マネックスグループ代表執行役社長CEO
マネックス証券株式会社代表取締役会長CEO

1987年東京大学法学部卒。ソロモン・ブラザーズを経て、1990年にゴールドマン・サックスへ。1994年に30歳で同社史上最年少のジェネラル・パートナーとなる。1999年、ソニー株式会社との共同出資でオンライン専業証券のマネックス証券を設立、2000年東証マザーズ上場、2004年には日興ビーンズを買収しマネックス・ビーンズ・ホールディングス(現マネックスグループ)を設立、2005年東証一部上場。現在、代表執行役社長CEO。マネックスグループは、全米5番目に大きいオンライン証券であるトレードステーションを含め世界に12拠点を持ち、全従業員数の7割を北米が占め、ベンチャー投資もしくはインキュベーションとしては、ライフネット生命、ユーザベース、マネーフォワードに対する初期投資がある。前東京証券取引所グループ社外取締役。現カカクコム社外取締役、ジェイアイエヌ社外取締役、ヒューマン・ライツ・ウォッチ東京コミティ議長並びに国際理事会理事、など。

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